2019年11月17日日曜日

過去の出来事を言葉にする難しさ


昨日、あだきち君は、福祉サービスのお出かけで、母校である特別支援学校の学園祭に連れて行ってもらったそうです。

卒業して3年になりますが、学校には、まだあだきち君を教えてくれた先生方が残っていて、声をかけてくださったとのこと。ありがたいことです。

帰宅したあだきち君に、「どの先生にあったの?  」と、担任だった先生型の名前をいろいろ聞いてみたのですが、「先生に、あった」というばかりで、残念ながら、お名前まではわかりませんでした。


たぶん、先生がたの名前を忘れてしまった訳ではないと思うのですが、何を聞かれているのか、どんなふうに答えていいのかが、よくわからないのだと思います。

過去の出来事について、思い出しながら語ることは、あだきち君にとっては、とても難しいことのようです。

それには、たぶん、記憶の想起の問題もからんでいるのだと思います。

昨日のことと、何年も前のことが、あだきち君のなかで、区別がついていないように思えることもあります。


目覚めた瞬間、夢の内容が現実のように思えることがありますが、あだきち君にとって、記憶のなかの過去の経験は、歳月に関係なく、ごちゃまぜになっているのかもしれません。

どんなに教えても、あだきち君の自発語に、時制の表現が現れないことも、おそらくは、記憶のありかたに由来することだろうと思っています。


2019年11月14日木曜日

シリアの自閉症の子どもたち

ここのブログは、重度自閉症児の育児と、しょーもない日常雑記について、ひたすら「日本語」で書いているブログなのに、アクセス解析で出てくる結果が、ちょっと変です。


・閲覧者の三分の一が、海外(アメリカとかウクライナとか)
・検索ワードが、自閉症とも育児とも全く関係のないものばかり



ちなみに、今日の主な検索ワードは、



シリア,化学兵器,アサド



でした。(´・ω・`)


そんな物騒な話題について書いたっけと思って、自分でも検索したてみら、ほんとに書いていました。すっかり忘れてた・・・

ポケモン、シリア、自閉症の子供たち…
https://abcdmeno.blogspot.com/2016/07/blog-post_23.html


シリアの自閉症の子どもたち、その後、どうしているのか。


そう思いながら、「シリア 自閉症」で検索してみたら、今年の六月のニュース記事が見つかりました。


戦地で暮らす自閉症の子ども、必要なケア受けられず シリア
2019年6月24日 12:00 発信地:シリア
https://www.afpbb.com/articles/-/3231519

一部引用させていただきます。


トルコとの国境付近にある小さな町アルマナーズ(Armanaz)は、シリア内戦で多くの戦死者を出したイドリブ(Idlib)県の中心部に位置する。だが住民のロバ・ガナム(Roba Ghanam)さんの不安は、内戦の他にもある。 
それが始まったのは数年前、息子のアイハム君(8)が言葉を発さず他の人々と交流しないことに気付いた時だった。またアイハム君は寝ていることが多く、幸せそうに見えなかった。 
 アイハム君は3歳から医師の診察を受けるようになったが、シリアでの自閉症の認知不足が障壁となった。最終的に、ハマ(Hama)県北部の医師から自閉症と診断された。 
 「シリアでは大きな問題があります。特に自閉症や特殊ニーズに対する認知という点で」とガナムさんは言う。 
(中略) 
 イドリブ市に住むハレド・アシ(Khaled Ashi)さん一家では、子ども3人のうち14歳のアラー君に自閉症がある。アシさんは、自閉症への認識不足のためにアラー君が周囲から粗末な扱いを受けることが多いと感じている。アシさんによると、アラー君の学校は現在、戦闘のせいで休校しているが、アラー君は学校に通っていた時、一人きりで過ごすことが多く、他の子たちと交流しなかった。 
「息子のような子どもの場合、仲良くなるためには常にそばにいて、いろいろなことを何度も一緒にする必要があります」とアシさんは言う。「特別な学校や、安全な医療施設も利用できない状況です。ここには何もありません。あるのは爆撃と死だけです」

 だが、どこを探せばいいかさえ分かっていれば、支援は提供されている。ガナムさんは2017年6月、アルマナーズ近郊のカファルタクハリム(Kafr Takharim)にあるサナド・センター(Sanad Centre)を見つけた。この施設は、特殊ニーズや障害、学習障害のある子どものケアに特化し、約80人の患者を抱えている。 
 ガナムさんは、アイハム君が7歳になるまで息子が自閉症であることを受け入れられなかったと打ち明ける。サナド・センターを見つけた後、アトマ(Atme)からアルマナーズへと引っ越し、同センターでボランティアとして働き始めた。 
 内戦や周囲の無知があっても、アシさんは将来への希望を捨てていない。特に、人々が見せる姿勢の変化には大きな期待を抱いている。

「人は一般的に、自閉症がある大人や子どもに思いやりを持っています」

とアシさん。「そうした人々を助けてくれたり、面倒を見てくれたりすることが多いです」 
By Zouhir Al Shimale , Adam Lucente
(c)Middle East Eye 2019/AFPBB News


シリアのイドリブの町をgoogleストリートビューで眺めようとしたのですが、路上を移動することはできず、いくつかの地点で画像が見られるようになっているだけでした。

画像表示可能なマークのなかに、イドリブ大学という表記があったので、開いてみたら、廃墟のような校舎が現れました。









イドリブでは、今年(2019年)、学校や病院などの民間施設を狙った大規模な攻撃が続いていたとのこと。


空爆続くシリア北西部、4月末からの3か月間に40万人以上が避難 国連
2019年7月27日 13:04 発信地:サラキブ/シリア




自閉症の子どもたちが、不安なく、幸せに暮らすことのできる国は、誰もがしあわせに生きられる国であるはずです。一日も早く、世界中が、そうなることを祈るばかりです。











尿素とアンモニアの関係について他人事でなく体験した日記


昨日、一泊のショートステイを終えて帰宅したあだきち君は、とても穏やかで、上機嫌でした。

いつもよりも、汚れ物も少なかったので、トイレの失敗もなかったのかなと思っていたのですが・・・。


あだきち君の荷物を片づけて、一段落したところで、居間に置いてある自分のパソコンで作業をしていると、とんでもないにおいがただよってきました。


一言でいうと、強烈な刺激臭。


もう少し具体的に描写するならば、うわさに聞くところの、ホンオフェという発酵食品を思わせるような、とてつもないアンモニア臭です。(T_T)



エイの肉を壺等に入れて冷暗所に置き、10日ほど発酵させるとエイの身に含まれる尿素などが加水分解されてアンモニアが発生して出来上がる。

世界有数でアジア最強とされる強烈な臭気は、口に入れた状態で深呼吸すると失神寸前になるともされ、臭気は納豆の14倍、キビヤックの5倍である。 
近年は日本のバラエティ番組で、スウェーデンのシュールストレミングに匹敵するアジアの臭い食品として扱われ、日本テレビのバラエティ番組『ワールド☆レコーズ』2004年7月4日放送分で取材陣が木浦へ赴き、宴席でふるまわれたホンオフェを喜んで口に入れた現地の男性が涙しながら食す様子を描写して「食べた人にしかわからない爽快な刺激があるのだというが」と説明し、実食したウッチャンナンチャンの内村光良は「小便だよ、小便」と形容した。

(ウィキペディア「ホンオフェ」のページから一部引用)


たしか、「もやしもん」という漫画では、このホンオフェの匂いを、夏場の田舎の公衆便所に譬えていたと記憶しています。

私も遠くなりゆく昭和世代の田舎出身なので、その譬えで、ホンオフェの匂いの真髄を想像することができたのですが、我が家には、そんな超ド級の発酵食品などありません。

自家製のぬか漬けは作っていますが、常に冷蔵庫保存していますし、そもそもほとんどキュウリしか漬けていませんから、アンモニアの発生は考えられません。


となると、これは絶対、あだきち君の汚れ物の臭気だと思ったのですが、ショートステイから帰宅後に、バッグのなかの汚れ物は、全部取り出して洗濯カゴに入れましたから、居間に臭気が漂う道理はありません。そもそも汚れ物を手に取ったときに、そんな匂いはしていなかったのです。


おかしい。でもマジで臭い(T_T)。

あだきち君本人の全身を含め、疑わしいものをかぎまくって臭気のもとを探すこと、三十分。


ブツは、私のパソコン机の下から出てきました。


理由はわかりませんが、あだきち君は、強烈なアンモニア臭を放つトランクスを、私のパソコン机の下の見えにくい場所に、放り込んだらしいのです。


隠ぺい工作なのか。
いたずら心なのか。



トランクスにしみ込んだ尿が、細菌によって分解されてアンモニアになって激臭を放つまで、どれくらいの時間がかかるのかは分かりませんが、昨日はちょっと暖かかったので、細菌の繁殖も早かったのでしょう。


汚れ物は洗濯カゴに入れてね、おかーさんの机の下に放り込むのはやめてねと、あだきち君に何度もお願いしましたが、おだやかに聞き流されました。(T_T)










2019年11月13日水曜日

復活してしまったトイレ問題をイメトレで解消するのは難しい件




昨晩、あだきち君は、ショートステイで介護施設に一泊しています。

帰宅は今日の午後の予定。


一泊だけのショートステイですが、あだきち君の荷物は大きくなります。

着替えのための衣類が、多いのです。

昨日は、ざっとこんな感じでした。

・ズボン 4着
・長袖シャツ 4着
・トレーナー 1着
・Tシャツ   1着
・パジャマ上下
・トランクス 5-6枚
・靴下 1足



一番かさばるのは、ズボンです。

普段の通所でも、二つは持たせています。


理由は、トイレ(小)での失敗があるからです。

お漏らしをするということは全くないのですが、用(小)を足すときに、


「まだ出ている最中に、終わったことにして、"しまってしまう"ために、ズボンが汚れる」


ということがあるのです。


誰かがそばにいて、意識の集中が途切れないように声をかけていれば、失敗はないのですが、介護施設では、あだきち君は、行きたいときに自分でトイレにいきますし、その都度職員さんが付き添えるわけではありません。


介護施設での職員さんとの面談のたびに、いろいろと改善策を話し合ってきたのですが、いい方法が見つからないまま、現在に至っています。



トイレでの失敗については、いくつかの理由があるのだろうと思っています。


もともと、あだきち君は、排尿の感覚の鈍さや、コントロールの難しさを持っています。


幼児期のあだきち君は、おしっこをしたいかどうかが、自分ではなかなか分からない様子でした。

トイレトレーニング中は、時間をみはからって、トイレにつれていってみても、体が緊張してしまうのか、出なくなってしまっていました。

何十分もトイレ前で励ましつづけても全く出ず(いま思えば逆効果でした…)、トイレから出た途端に、ジャーっ・・ということも、あったように記憶しています。


自分でトイレができるようになったのは、小学生になって一か月目くらいでした。

成功したのは、学校のトイレ。

周囲の子どもたちが、当たり前のようにトイレを使うのを見ていたことが、有効なイメトレになったのではないかと、私は思っています。


その後の12年間の学校時代では、トイレでの失敗というのは、ほとんどありませんでした。

それが介護施設に通所するようになって、出てきたということは、学校でのイメトレによる効果が切れてしまい、もともと持っていた、排尿感覚やコントロールの鈍さにほうに、支配されるようになってしまったということなのかもしれません。


あだきち君が通っている施設は、学校よりもずっと少人数ですし、重度の身体障害を持つ利用者さんも多いので、トイレで、頻繁に他の利用者さんと一緒になるということもありません。

「ちゃんとできている」人の姿を、日常的にあまり目にしなくなったことが、大きな理由だとすると、改善の方策を探すことは、なかなか難しいということになります。



イメトレが有効だとはいえ、まさか、男性のトイレシーンを動画などにとって、iPadか何かで、繰り返し見せる・・・というわけにもいかないですし。


いや、それがもしも有効なのだとすれば、実行すべきなのかもしれませんが・・・



モデルになってくれそうなのは、おとーさんしかいませんし、きっとおとーさんは嫌がるでしょうし、そんなモノを撮影するのは私だってイヤですし、さらに「それ」を延々と自宅で視聴されるというのは・・・・





もうすこし、考えてみることにします。(´・ω・`)





2019年11月11日月曜日

赤ちゃんの泣き声で、自閉症の早期発見ができるようになる?





赤ちゃんの泣き声を分析するアプリによって、自閉症の早期発見が可能になるかもしれないという、とても興味深い記事を読みました。


精度90%で「泣き声の意味」を当てる (2018年6月10日)
https://tabi-labo.com/288382/journey-chatter-baby


記事URLが変更になったり、消えてしまうことがあるかもしれないので(そういうことが、よくあります…)、一部引用しておきます。



「ChatterBaby」は、アメリカのUCLAで研究しているブレーンたちの知識がいっぱい詰まった、赤ちゃんの泣き声を“翻訳”してくれるアプリだ。精度は約90%を誇る。 
だけど、泣き声の意味を当てるだけが「ChatterBaby」の特徴じゃない。赤ちゃんが抱えている脳の異常を見つけられる可能性だってある。 
もともとは、耳の聞こえない親をサポートするためにアプリは開発された。 
ワクチンを接種したときやピアスホールを開けたとき(欧米っぽいのだが……)に、赤ちゃんの泣き声をサンプルとして集める。そして、子育て経験が豊富なお母さんに、どんな理由で泣いているのかを予測してもらう。同じような答えになったら、人工知能に学習させる。これらのステップを繰り返す。
分かるようになったのは3種類。「お腹が減っているとき」と「痛いとき」、「わめいているとき」だ。ちなみに、視覚的に分かるようにグラフでも表示される。 
現在、ユーザーが赤ちゃんの泣き声を分析したときは、その音声が研究材料の一部としてUCLAのサーバーに登録される。 
これは、泣くという行為がどのように成長に関係するのかを調べるためだという。また、泣き声を分析していけば自閉症の早期発見につながるのではないかという仮説も、膨大なデータを集める理由の1つになっている。 
使う人が多くなればなるほど、アプリの精度は上がっていくし、新たな発見のきっかけになるかもしれない。「ChatterBaby」は、日本でも無料でダウンロードできる。



「ChatterBaby」は、いまのところ、英語対応のみのようで、ユーザーの評価も少ないようです。


気になるのは、集積されていく膨大な量の音声データから、どのように発達障害の音声パターンを見分けるのかということです。

音声データを提供した赤ちゃんたちが、成長後に「自閉症と診断されたかどうか」というデータは、このアプリでは集められないと思うのですが、どうなのか。


APP STOREでは、「ChatterBaby」のデータ利用について、次のように説明されていました。


What happens to my data?
We store it for science on a server that is HIPAA-compliant, removing as much information as possible that links your data to you individually. We are interested in discovering whether abnormal vocalization patterns in infants can predict neurodevelopmental delays such as autism. Odds are, a human being will never actually hear your baby’s audio sample; a computer script will run some math on it and throw the answers in a big spreadsheet to do even more math. For more information, see the Consent Form you agreed to when launching the app: link to consent.


データはどうなりますか?科学用の、HIPAA準拠したサーバーに保存し、データを個別にリンクする情報を可能な限り削除します。乳児の異常な発声パターンが自閉症などの神経発達遅延を予測できるかどうかを発見することに興味があります。人間が赤ちゃんのオーディオサンプルを実際に聞くことはありません。コンピュータスクリプトが計算を実行し、大きなスプレッドシートに回答を投げてさらに計算を行います。詳細については、アプリの起動時に同意した同意フォーム:同意へのリンクを参照してください。



この説明だけでは、詳しいことはわかりませんが、まずは正常な発声パターンと、そこからはずれた発生パターンをさぐっていく、というところでしょうか。


自閉症を含めた、発達障害の早期発見は、早期対応による治療・教育の効果など、子どもへの恩恵が大きければ、とても望ましいものとなりますが、見つかっただけで、後のケアにつながらなければ、親にとっては、微妙なものとなりそうです。


「アプリにそう言われたけれど、どうすればいいのか・・・」と、乳児の我が子を前にして、親が途方にくれるだけというのでは、早期発見などないほうがましということになりかねません。


早期発見だけではなく、脳神経のどの部分の発達に問題があるのか、それを少しでも改善するには、どうすればいいのか・・・というところまで、明らかになってくれるといいなと思います。







2019年11月10日日曜日

スーパーでのお買い物



日曜日の午前中は、おとーさんと二人で、スーパーに買い物に行くのが、あだきち君の決まり事です。

力持ちなので、重い荷物をリュックサックに入れて、苦も無く背負って歩いてくれます。

この習慣は、特別支援学校の中学部か高等部あたりから始まって、成人後のいまも、ずっと続いています。


でも、赤ちゃんのころから、幼児期までのあだきち君は、スーパーがとても苦手でした。

五歳くらいまでは、入口まで行っただけでもパニックになってしまうため、店内に入ることも難しい状態でした。知覚過敏のために、スーパーの照明や雑音などが、耐えがたく感じられたのだろうと思います。

知覚過敏は徐々に改善して、小学校の高学年になるころには、家族と一緒に買い物を楽しめるようになりました。


けれども、同時に困った問題もいろいと出てきました。


まず、ほしい商品を見つけると、黙って持ち帰ろうとしてしまうこと。


お店を出てから、あだきち君が手に商品を持っているのに気づいて、あわてて戻って謝罪した上、買い取ったということもありました。状況的には万引きと変わりませんから、ほんとうに気を使いました。


その後何年もかけて、学校や療育教室などでも買い物の練習などを続けるうちに、「お店に並んでいるものは、お金を払ってから、持ち帰る」ということが分かるようになり、持ち去りはなくなりました。


でも、それで一安心というわけには、いきませんでした。

今度は、お店で欲しいものを見つけると、どんどん買い物かごに放り込むようになったのです。

全部を買い与えることはできませんから、棚に戻すことになるのですが、それがパニックやカンシャクの引き金になることもありました。


買わずに我慢する、あるいは、買い物かごに入れてしまったものを、カンシャクを起こさずに棚に戻す、ということができるようになるには、たくさんの経験と、長い時間が必要でした。


そうこうするうちに、「親が見ていないスキを狙って、ほしいお菓子や飲み物を、買い物かごにこっそり忍ばせる」という、高度な技を開発してしまう、ということもありました。

レジでの清算中に、買う予定のなかったお菓子や飲み物が、買い物かごの底のほうに入っているのに気づいて、「やられた!」と心の中で叫ぶということが、何度あったか分かりません。


その注意力や観察力を、もっと別なところで活用してくれればと、切実に思ったものですが・・・


「どうしても欲しい」という強い気持ちがあるからこそ、そういう能力を発揮できたのでしょう。


成人してからは、お買い物で問題を起こすことは、ほとんどなくなっています。






2019年11月9日土曜日

寝不足の土曜日、呼びかけと、対話


あだきち君の声で起こされて、枕元のiPhoneを開いて時刻をみたら、まだ朝の4時半でした。

早起きのあだきち君ですが、いつもなら、6時すぎるまでは家族を寝かせておいてくれます。

何かあったのだろうと思うのですが、寝起きは身体が痛くてすぐには起き上がれないので、あだきち君の声を聞いていると、しきりに、お姉ちゃんの名前を連呼しています。


あー、これは、積み木を見失ったんだなと気づきました。

あだきち君は、家にいるときには、お姉さんのあねぞうさんが幼児の頃に遊んでいた、平べったい積み木を4個、手に持って過ごしています。

積み木には、お姉さんの名前が書いてあるため、あだきち君の中では、「お姉ちゃんの名前 = 積み木の名称」ということになってしまっているのでした。


私が動けずにいるうちに、同じくあだきち君の声で起こされた、あねぞうさんが、積み木を発見してくれたようでした。



あだちき君は、言葉が出るようになってからも、家族を名前で呼ぶということを、滅多にしません。名前は分かっていると思うのですが、自分から誰かに呼びかける、という発想がないようなのです。

私もこれまで、「おかあさん」と呼ばれたことは、数えるほどしかありません。
正確に数えていたわけではありませんが、たぶん、10回はこえていないと思います。



でも、あだきち君は、名前を呼ばれると、ちゃんと、「はい」と答えます。

学校生活のなかで、そういう振る舞いを習得したのだと思うのですが、応答しているという意識は薄そうで、名前が聞こえたら条件反射的に「はい」という音声をあげるのだという、機械的な反応のように見えます。


どうしたら、あだきち君「対話」という概念を持ってもらうことができるのか。


人を名前で呼ばないこと。
物に書かれた所有者の名前を物の名前と思ってしまうこと。

これらは、どこかで繋がっている問題のようにも思います。